保険と投資、どっちを取るべきか。数字と感覚の両方で考える

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「保険って入っといたほうがいいよ」と言われて、とりあえず入っている人は多いと思います。

かといって「保険は全部無駄だ、全部投資に回せ」という意見を鵜呑みにするのも、ちょっと怖い。

どっちが正しいのか。結論から言うと、数字で見ると投資が合理的なケースが多い。ただし最後はあなたの判断です。

「どっちが得か」に一律の答えはなく、リスクのタイプ(医療・死亡・火災・自動車など、どんなリスクに備えるかの種類)と自分の判断軸次第で変わります。この記事では、次の流れで整理します。

  1. 数字で判定(投資した場合の運用額 vs 現実的な最大損失)
  2. 数字の外にある価値の話(不確実性プレミアム)
  3. タイプ別の傾向
  4. 最後の判断軸

数字で判定|投資した運用額 vs 現実的な最大損失

このセクションでは、保険料を払い続けず、その同額を毎月投資に回した場合の30年後の運用額と、保険でカバーする予定の最大損失を比較します。投資運用額のほうが大きければ、自己負担で吸収できる範囲なので「投資寄り」。投資運用額より最大損失のほうが大きければ、吸収しきれないので「保険必須」と判定します。

前提

  • 投資期間: 30年(30歳→60歳)
  • 想定利回り: 年5%(インデックス(株価指数)の長期実績の保守的概算。GPIFは過去24年の累積で年4.26%、S&P500(米国主要500社の株価指数)は過去30年で実質約7.4%)(※10)
  • 保険料相場: 生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」の中央値ベース(※4)
  • 現実的な最大損失: 発生する可能性が現実的にあるリスクに絞る(隕石・テロ等の極端な低確率は除外)

判定軸について補足

「期待値(確率×最大損失)で計算すれば保険はほぼ全部損」という意見があります。これは数字として正しい。保険料は運営費・利益を上乗せして設計されているので、統計上は払った保険料の方が受け取る保険金より多くなるように作られています。

ただしそれは、「最悪ケースを自己負担で吸収できるか」という視点を無視しています。確率が低くても、起きたときに吸収できない損失は別の話です。本記事はこの「自己負担吸収できるか」を判定軸にします。

判定の閾値(基準)

  • 投資寄り: 投資運用額 ≥ 最大損失(自己負担で吸収可能)
  • 保険必須: 投資運用額 < 最大損失(自己負担で吸収不可)

リスクヘッジ系(予測できない損失への保険)

リスクヘッジ系の保険とは、入院・死亡・火災・地震・交通事故など「いつ起きるか予測できない損失への備え」です。

#リスクのタイプ月額保険料投資30年後(年利5%)現実的な最大損失発生確率(30年累積)判定
1医療(独身会社員・30歳)月2,500円(※4)約208万円1回入院 約60万円(高額療養費制度(※1)の自己負担上限 月8〜9万円 × 入院日数)(※2,3)30〜60歳の30年累積で最低1回入院する確率 約7.8%(※2)投資寄り
2死亡(独身・扶養なし・30歳)月1,500円(※4)約125万円葬式代 100〜120万円(全国平均119万円・家族葬なら50〜80万円)30〜60歳の30年累積死亡率 男性で約7〜10%(年齢上昇含む)(※2)投資寄り
3死亡(家族あり・配偶者+子1人・30歳男性・55歳満了)月4,500円(※4)約374万円配偶者・子の生活費+学費 = 数千万円規模(公立中心840万円〜私立中心2,400万円超)(※8)30〜60歳の30年累積死亡率 男性で約7〜10%(年齢上昇含む)(※2)保険必須
4火災(戸建て・建物2,000万円・木造・水災あり・地震保険なし)月2,500〜3,000円約208〜249万円建て替え費用 2,000万円30年累積で火災に遭う確率 約0.66%(※5)保険必須
5火災(戸建て・建物500万円・築古)月1,500円(概算)約125万円建て替え費用 500万円30年累積で火災に遭う確率 約0.66%(※5)保険必須
6火災(賃貸の家財・保険金300万円)月400円約33万円家財全損時の平均補償額 約150万円30年累積で火災に遭う確率 約0.66%(※5)保険必須
7地震(東京・木造・地震保険金1,000万円)月3,400円(※6)約283万円半損補償 1,000万円(火災保険金額の50%上限)南海トラフ30年以内80%・首都直下30年以内70%(※6)保険必須
8自動車(対人対物無制限・30代・等級中位・車両保険なし)月2,900円約241万円対人賠償の判例最高額 約5億2,800万円(※7)30年累積死亡事故率 約0.06%(※7)保険必須

注: 月額保険料は中央値ベースの一般的相場。保険会社・契約条件・年齢によって大きく変動します。投資運用額は月額×12×30年の積立を年利5%で複利運用した場合の計算値。高額療養費制度とは、1か月の医療費の自己負担が一定額を超えた場合に超過分が払い戻される制度です。発生確率は30〜60歳の30年間の累積値(既に単年率から計算)。年齢が上がるほど発生確率は上がるため、単年×30年の単純計算より実態は高い場合がある(死亡率等)。

リスクヘッジ系の結論

  • 投資寄り判定: 医療(独身)/ 死亡(独身・扶養なし)
  • 保険必須判定: 死亡(家族あり)/ 火災(全パターン)/ 地震 / 自動車

一律「保険は損」ではありません。リスクのタイプで判断が変わります。

具体的にライフステージ別に整理すると、こんな感じです。

独身・扶養なしの場合: 医療・死亡保険は最小限にして、月2,500〜4,000円を投資に回す選択が数字の答えです。30代独身なら「月2,500円の医療保険→NISA積立に転換」だけで30年後に200万円超の差になります。

家族あり・持ち家・車持ちの場合: 家族がいる・持ち家がある・車を持っているケースは、最悪損失が「自己負担で吸収できない規模」になるため保険が必須です。死亡(家族あり)・火災・地震・自動車は削れる保険ではありません。むしろここを削ると後悔するやつです。

貯蓄系(予測できる支出への準備手段)

学資保険・個人年金保険は「リスクヘッジ」ではなく、「学費・老後資金という予測できる支出への貯蓄手段」です。比較の軸が変わります。保険とNISA・iDeCoの利回りを比較するのが正しい判定軸になります。

NISA・iDeCoの詳しい使い分けについては投資の入れ物 NISA・iDeCo・特定口座の使い分けを参照してください。

#商品月額保険料投資30年後(NISA・年利5%)商品の利回り比較対象判定
9学資保険(満期金300万円)月12,000円約998万円返戻率 104〜108%(年換算 約0.3〜0.8%)子の学費 公立中心840万円〜私立中心2,400万円超(※8)NISA積立の方が2倍超の運用効率
10個人年金保険月12,000円(※4)約998万円予定利率 1.40〜4.60%(2024年・商品差大)公的年金不足 約2,000万円/30年(※9)iDeCo/NISAの方が税優遇込みで有利

注: 学資保険・個人年金保険には「契約者死亡時の保険料免除」というリスクヘッジ機能もあります。これに価値を感じるなら保険を選ぶ理由になります。ただし、その価値分は数学的に保険料に上乗せされています(利回り低下の主因でもあります)。

貯蓄系の結論

貯蓄商品としての保険(学資・個人年金)は、NISAやiDeCoと比べると利回りで劣る傾向があります。「保険料免除」というリスクヘッジ機能に価値を感じない限り、NISA・iDeCoを優先するのが数字の答えです。

学資保険を月12,000円払い続けるのと、同額をNISAに30年積み立てるのでは、試算上の運用額が2倍超の差になります。「貯めながら守る」という営業トークは魅力的に聞こえますが、その「守り」に年率数%のコストを払い続けているという理解が必要です。

一律「保険は損」でも「保険は必須」でもない。リスクのタイプで判断が180度変わります。

ただし数字だけでは決まらない|不確実性プレミアムの話

ここまで数字で判定してきました。ただ、保険には「数字の外の価値」があります。これを「不確実性プレミアム(不確実な未来に対して払うコスト)」と呼びます。

リスクの平準化機能

確率は低いが、起きたら詰むリスクを月々の保険料でならすのが保険本来の役割です。

「起きるか起きないか」の不確実性そのものに対価を払う発想です。保険会社の保険料は「期待損失(確率×損失額)+ 付加保険料(運営費・利益・不確実性プレミアム)」で設計されています。だから数字上は「払った保険料 > 受け取る保険金の期待値」になります。

つまり、保険会社は「あなたの不安をタダでは受け取らない」設計になってます。うまいビジネスやなとは思いつつ、それでも意味があるのが「リスクの平準化」という考え方です。それは分かった上で入るのが保険です。

効用関数の非線形性(数学的にも合理的な話)

「損失の大きさによって、ダメージの感じ方が変わる」という現象があります。

たとえば、資産1,000万円の人が50万円を失う痛みと、500万円を失う痛みは、単純に「10倍」ではありません。後者の方がはるかに大きく感じます。これは効用関数(満足度・幸福度を数学的に表した関数)の凹性と呼ばれる性質で、損失額が資産に占める比率が大きくなるほど、精神的ダメージが加速度的に増します。

この性質から言えば、「資産を吹き飛ばすかもしれない大きなリスクへの保険は、数学的にも合理性がある」ということです。自動車の対人賠償が「保険必須」になるのも同じ理由です。

もう少し具体的に言うと、年収300万円の人と年収1,000万円の人が同じ100万円を失っても、ダメージの体感は全然違います。前者にとっては年収の3分の1が消えることで、生活が根本から揺らぐレベル。後者には痛手ではあっても再起不能ではない。同じ「100万円の損失」でも、効用関数の凹性から言えば前者のダメージは数倍大きい。保険の必要性は「損失の絶対額」よりも「資産に対する損失の比率」で考える方が合理的です。

心理的安心(プロスペクト理論の観点)

プロスペクト理論(行動経済学の理論で、人が損失と利得をどう評価するかを説明するモデル)によると、同じ金額でも「失う痛み」は「得る喜び」の2〜2.5倍として知覚されます。

これは数学的には非合理(バイアス)です。ただ、感情として実在する。保険の「安心感」に月々の保険料を払うことは、合理的でなくても人として自然な反応だと思います。

注意が必要なのは、このバイアスを保険会社の営業が意識的に活用してくる点です。「万が一のとき、家族を守れますか?」という訴求は、プロスペクト理論を利用しています。数字を見ずに感情だけで判断すると、不要な保険に入り続けることになります。

タイプ別の傾向|数字派と安心派

「数字で見るとこうなる」という分析は出せます。ただ、実際の判断は自分のタイプによって変わります。

数字派(投資寄り)

  • 期待値・確率ベースで判断できる
  • 「統計上は自己負担で吸収できる損失なら、保険料を投資に回す方が合理的」
  • 投資比重を高め、大損失リスクだけ最低限の保険でカバーする
  • 典型的な保険構成例: 火災・地震・自動車のみ加入。医療・死亡(独身)は解約してNISA積立に転換。生命保険は掛け捨ての最小額だけ残す

安心派(保険寄り)

  • 最悪ケース回避を優先する
  • 「数字的には損でも、安心して生活できるなら保険料は惜しくない」
  • 保険を厚めにして、余裕資金を投資に回す
  • 典型的な保険構成例: 医療・死亡・火災・地震・自動車に加え、がん保険や収入保障保険も加入。保険料は月2〜3万円規模になるが、その分「最悪ケースへの不安」が減って日常の意思決定が楽になる

中間派(多くの人がここ)

実際のところ、多くの人はこの中間にいると思います。

大損失リスク(火災・地震・自動車・家族あり死亡)は保険でカバーし、小さなリスク(独身の医療・死亡)は自己受容して投資に回す。この現実解が、数字と気持ちのバランスが一番取りやすいです。

  • 典型的な保険構成例: 火災・地震・自動車は必須加入。死亡保険は家族構成で判断(独身なら不要・家族ありなら掛け捨て定期で必要最小限)。医療保険は「独身なら不要・独身でも安心のために月2,000円以下の安いプランに留める」あたりが落としどころです

「今の保険料は払い過ぎているかも」と感じている人は、まず保険の内訳を確認して、リスクのタイプ別に「保険が必要か/投資で代替できるか」を判断してみると整理しやすいです。

最後はあなたの判断|数字を見た上での「気持ち次第」

「気持ち次第」というまとめは、思考停止ではありません。

数字を見せた上で「それでも保険に入りたい」なら、不確実性プレミアムへの対価を払う選択です。これは合理的です。数字を見て「投資に回す」を選ぶなら、リスクを自己受容する選択です。これも合理的です。

大事なのは「思考停止せず、自分の判断軸を持つ」こと。

保険会社の営業トークに流されるのも、投資インフルエンサーの「保険全解約」論に流されるのも、どちらも自分の軸がない状態です(両極端に引っ張られる感じ、すごく分かる)。今の自分がどのタイプか(数字派・安心派・中間派)を把握した上で判断するのが、一番リスクが少ないやり方だと思います。

タイプ別の「まず一歩」は、こんな感じです。

  • 数字派の人: 今の保険証券を取り出して、リスクヘッジ系の各リスク項目と照合してみる。「投資寄り」判定の保険で払い続けているものがあれば解約候補
  • 安心派の人: 保険の見直しは急がなくていい。ただ「今の保険で本当に守りたいリスクが守れているか」だけ確認する。不要な重複保険を整理するだけでも保険料が下がることがある
  • 中間派の人: 家族構成・持ち家有無・車の所有状況が変わったタイミング(結婚・出産・引越し・購入)で保険を見直す習慣をつける。生活環境に合わせて「必要な保険」も変わる

固定費の見直しという観点では固定費月6万円。節約してるつもりはないのに周りより安いも参考になります。投資に回せるお金を増やすための全体戦略は入金力を爆上げした方法にまとめています。

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